両親の老い

投稿者: | 2018年9月18日

(2人のネタが続いてしまうのだが。。)

 

旅行好きの両親。頻繁に1か月ほど、どこかに行く。
行き先はなぜなのか毎度教えてくれない。

その間橋本は、日本で取材や打ち合わせなどをして過ごすのだが、両親が日本に帰って来るころ、
入れ替わるように今度は橋本が日本を出る。

理由は、「嫁に行け」があまりにうるさいからであるのはさておき、
それゆえ、両親と顔を合わせるのは1か月に数日という繰り返し。

橋本が日本に帰って来ると、その数日間で様々なことをキャッチアップするのだが、
その時の会話以外に、かつその時の会話以上に、彼らの本心を知ることができるモノがある。

 

テレビの録画記録だ。

 

工場をやっていた頃に彼らが残す録画の内容は、
一丁前に経済番組や「日本のモノづくり」、料理番組なんかが多かったのだが、
工場を辞めた途端、内容は一変。

「旅行番組」と「家庭の医学」一色になる。

 

旅行番組の中でも特に多いのが、「豪華客船」と「マチュピチュ」の特集。
実は、両親が会社をたたんだ最大の理由の1つも、この2つがしたいためだった。

家族経営していると、2人で旅行に出ることがなかなかできず。
橋本が工場に入るようになってからは、数泊の国内やアジア旅行をするようにはなったものの、
こうした長期、遠出の旅行は難しかった。

 

工場を閉めて、もうすぐ4年。
海外旅行には「コンビニか」ってほど行くのに、なぜかまだ2人はこの2つを達成していない。

 

どうして行かないのか、本人たちもあまりはっきり教えてくれないのだが、
長年、彼らの娘をやってきた橋本が推測するに、やはり怖いのかなと。

海外旅行にはなれているため、「日本を離れること」が怖いわけではない。
おそらく長期の「海上」、「秘境」というのがネックなんやと思う。

 

そう推測する理由が、もう1つの録画記録、「家庭の医学」にある。
両親とも、日本に帰ってきた時のスケジュールが「〇〇病院」と「△△病院」ばっかなのだ。

 

記事などでも述べているため、ご存じの方もいらっしゃるかもしれないが、
父親は昔、くも膜下出血を起こし、今も高次脳機能障害を抱えている。
さらに数年前には、膀胱がんを発症。
大きな大学病院の中で、彼は脳神経外科と泌尿器科の医者から引っ張りだこ。
自宅に戻って来た父親のカバンには、サプリメントかと思うほどの薬が入っている。

 

一方の母も、なんや肝臓に水が溜まっていると言い始め、
日本で会う両親は、以前の「通勤」から「通院」に変わっただけなんちゃうかと思う生活をしている。

そんな中、大海原で何らかの症状が出たら、たとえ船内全体が病院になっていても不安だろうし、
日本から最も遠い秘境の地で頼れるのも、「マヤ文明の秘力」くらいと考えると、
そりゃ、頻繁に海外を旅行していても不安にはなる。

 

まあ、それでも1か月以上日本を離れられるのは、まだまだ健康な証拠。
しかも、そんな自身の健康を不安がったり、ひたすら通院したりしてる割には、これがまあよう食う(笑)

普通、年を取ると脂ものを受け付けなくなると言うが、彼らの胃液はママレモンでできてるんちゃうかと思うほど、
食事が毎度脂っこい。

週に2日のペースで行く焼肉屋では、45分で4人前を2人で平らげ、嵐のように去っていくため、
予約席のプレートが置いてあっても、顔見知りの店員も「ここどうぞ」と席を空けてくれるし、
「1時間400円」の店の隣の駐車場で(田舎ゆえ激安)400円以上払ったことがない。
何なら15分100円で刻んでくれれば、300円でいける。

 

そんな2人に工場閉鎖以降、娘として「たいがいにせえよ」と口酸っぱく口酸っぱく言い続けてきたのだが、
最近、いつものようにテレビの録画記録を見た時に、もう1つ「あるテーマ」の特集が加わっていることに気付き、
色々考えさせられるようになった。
そのテーマ、

 

「終活」だ。

 

膀胱がんになった後も、パチンコ好きな父親は、周りの煙たさと興奮から、
なかなかタバコをやめられずにおり、それで橋本も「長生きせな橋本の孫は見られへんで」と相当憤慨してきたのだが、
この「終活」を2人がそれなりに考え始めてるのかと知り、
(橋本よりは)残り少ない彼らの人生を考えると、
「我慢」ばかりが人生じゃないよな。
やりたいことやるために仕事も辞めたんやしな。

と思うようになった。

 

先日、ようやくヨーロッパから韓国に移動し、
連絡が取れた2人の顔を小さなスマホから久しぶりに確認できた時、
改めて「好きにすればいい」と、なんや心から思うようになった。

 

悔いなく生きろ。

病気のリスクがあろうが、それで寿命がちょっとくらい縮まろうが、
好きにすればいい。いい意味で。
今までたくさんの我慢をしてきたんやしね。

橋本の眉間からも、数本親向けのシワが消えそうな気がする。

 

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